興南は0−0で迎えた4回裏、四球をきっかけに連打で7得点を奪うと続く5、6回にも追加点を挙げ一気に引き離した。先発の島袋投手は打たせて取るピッチングで東海大相模打線を1点に抑えた。
一方、40年ぶりの優勝を目指した東海大相模だったが先発した一二三投手は連戦の疲れからか精彩を欠き中盤に打ち込まれ、前の試合まで強打を誇った打線は9安打を放つものの1得点に終わった。
【大会第15日試合結果】
◎決 勝
東海相模0 0 0 0 0 0 1 0 0 1
興 南0 0 0 7 1 5 0 0 x 13
(興南は初優勝)
<コメント>
全国約4千校が参加し6月に沖縄で幕を開けた今大会は、春のセンバツ大会を制し、各校の厳しいマークを受けながら勝ち進んだ沖縄の興南高校が夏も頂点に立って幕を閉じた。
今風に言うと「ヤバイ」と言う言葉が当て嵌まるだろうか。この代の興南は春夏通じでとにかく強かった。形容する言葉としてはそれ位しか見つからない。春のセンバツで優勝し各校のマークが厳しくなる中で、仕切り直して夏も甲子園に戻って来た。各校が興南の背中を追い続け、追い越しそうな高校も現れたが、それらの追随を許さず夏も制したのは見事の一言に尽きる。
春夏連覇と言えば松坂投手擁する横浜高校が思い出される。あの時のメンバーは松坂投手含めその後プロに進んだ選手が何名かおり、選手個人の質が高かった。今回の興南は選手個人と言うよりもチーム一丸となって戦っている印象があった。島袋投手がクローズアップされていたが、他の選手もやるべき事をしっかり把握し、劣勢でも慌てない戦いぶりはこれまでの沖縄の高校にはない「大人のチーム」の雰囲気があった。スイッチが入ると傘にかかって相手をねじ伏せる攻撃力も圧巻だった。
一方、敗れはしたが東海大相模の躍進も忘れてはならない。もしかしたら甲子園で勝ち抜くよりも難しいと思われる神奈川県予選。ここ数年、破れそうで破れなかった壁を乗り越えて、33年ぶり甲子園に姿を見せて決勝までコマを進めた。エースの一二三投手は、注目されていたプロからの評価が下がる可能性があるリスクを承知でフォームを変えて甲子園に戻って来た。並大抵の努力ではなかったはずである。最後を飾る事は出来なかったが、今後の野球人生にきっと役立つ事だろう。
決勝で対戦した興南と東海大相模のチーム力にさほど大きな差はなかったと思う。しかし結果的には大差が付いてしまった。今大会は大差の付く試合が比較的多かったが、この試合のように毎回得点を重ねて大差になるのではなく、早実×中京大中京で見られたように1つのイニングで大量得点が入ってこのような結果になる傾向が見られた。高校野球の面白い所であり、プレー、指導している側としては怖さでもある。
熱戦が繰り広げられた大会も終わってみれば春のチャンピオンが実力をいかんなく発揮して幕を閉じた「筋書きのないドラマ2010夏」。まだ暑い日が続いているが、開幕した頃よりも空が高くなったような気がする。秋は確実に近付いてきている。
2011年、華やかな舞台に立つ為の戦いが始まっている地区もある。来年の春そして夏に主役を担うのはどんなチーム、選手なのかに思いを馳せつつ(出来れば、来年こそは我が故郷の東北地方に優勝旗が渡って欲しいと思いつつ)「筋書きのないドラマ2010」を終わりにしたいと思う。
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